2024-08-18

ポイント

雪山の山荘というクローズドサークルの王道ミステリー
読者が謎を解くタイプのミステリー
クセの強い登場人物も魅力

あらすじ

広告代理店で働く杉下和夫は、芸能部への転属を命じられ、星園詩郎のマネージャー見習いを担当することとなる。 星園詩郎は、星の美しさを広める「スターウォッチャー」という肩書を持つタレントで、得意なキャラクターと美しい容姿で人気を博していた。

ある日、杉下はキャンプ場のイメージキャラクターを依頼された星園と共に雪山の山荘を訪れる。 そこには、UFO研究科である嵯峨島一輝、小説家の草吹あかねとその秘書の早沢麻子、女子大生の小平ユミと大日向美樹子、不動産開発会社社長の岩岸とその部下の財野が集まった。

交通と連絡手段が遮断され雪山で事件が起こる。

全体の印象

この小説は、読者自身が主人公になったかのように謎解きを楽しめる作品。物語に入り込んで進めるタイプのミステリーで、特に主人公の視点で進行するので、感情移入しやすく、物語にのめり込めた。

キャラクター

登場人物たちは、社長や社長に付いてきた女子大生、人気タレントの星園詩郎、人気小説家など、主人公の杉下和夫にとっては一筋縄ではいかない人物ばかりで、初めは彼の立場が非常に弱く感じる。読者が謎解きをするタイプなので、主人公に自己投影して読み進めるため、よりキャラクターの個性の強さを感じた。特に、星園詩郎は甘い言葉を多用し、女性に人気があるいけ好かないキャラクターとして描かれる。しかし、物語が進むにつれて、彼の本来の性格や隠された目的が明らかになり、主人公との距離が縮まっていく過程は非常に興味深く、物語全体への没入感をさらに高めてくれた。

ストーリー展開

本作は、雪山で交通や連絡手段が遮断された中で事件が発生するという、王道ミステリーの設定。この「クローズドサークル」の舞台は、足跡や痕跡が残りやすく、外部との通信が絶たれることで、読者が事件の謎により深く入り込める構成で楽しめた。王道の設定でありながら、やはりこの形式が最も理解しやすく、ミステリーとしての楽しさを最大限に引き出していたように感じる。

ミステリー要素

物語の所々で、これまでに明かされた情報が明示されるため、読者は謎解きのプロセスにしっかりと没入できた。また、結末では予想を裏切るどんでん返しがあり、最後まで飽きさせない展開。しっかりとした構成のミステリーであり、オチまで含めて非常に満足できる作品だった。

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