ポイント
- 武侠小説と本格ミステリーの融合
- 「館」×「孤島」×「特殊設定」×「百合」
あらすじ
「館」×「孤島」×「特殊設定」×「百合」!
孤絶した楼閣=密室で起きた「絶対不可能殺人」 最侠のヒロインは、最愛の師の「死の謎」を解くことができるのか!?
選考委員絶賛! 第67回江戸川乱歩賞受賞作 綾辻行人「論理的に真相を解き明かしていくスタンスにはブレがなく、スリリングな謎解きの演出も◎」 京極夏彦「南宋の密室という蠱惑。武侠小説としての外連。特殊設定ミステリという挑戦。愉しい」
湖に浮かぶ孤島で、武術の達人・泰隆が遺体となって発見された。三人の武侠を招き、うち一人に「奥義」を授けるとしていた矢先のことだった。孤絶した楼閣は、特殊な武芸を身につけた彼らをもってしても侵入は不可能にみえる。泰隆の愛弟子・紫苑は、姉妹以上の絆で結ばれた恋華とともに、その謎に挑む!
全体の印象
この物語は、1200年あたりの中国・宋朝を舞台に、武侠小説と本格ミステリーが融合された作品。武侠小説はほとんど読んだことがなかったので、時代背景や設定に慣れるのに少し時間がかかりましたが、物語に入り込むと魅力的で楽しめた。特に、孤立した楼閣での殺人事件が展開され、登場人物も多くないため、ストーリーが理解しやすく、最後まで楽しめました。
武俠小説における「俠」とは、己の信条に則って正義のために行動しようという精神のあり方であり、そこに手段としての武術、すなわち「武」が加わったものが「武俠」である。
キャラクター
主人公の紫苑と恋華の関係が非常に印象的です。彼女たちは女性同士であり、流派に禁じられた恋愛関係であった。この関係が物語の緊張感を高め、さらに紫苑とその師匠である奏隆との親子の絆が描かれるシーンは、感動的で心に残る。少ない登場人物だからこそ、それぞれの関係性が深く描かれており、その点が非常に良かった。
ストーリー展開
弱った紫苑と、武侠ではない恋華が協力して、容疑者である武侠たち相手に犯人を特定しようとする展開が見どころだった。事件の発生から最後まで、新たな情報や展開が続々と現れ、テンポ良く物語が進むため、飽きることなく一気に読み進めることができた。最後のオチも非常に満足のいくものでした。
ミステリー要素
本作のミステリー要素は、武侠小説の世界観と見事に調和しており、推理の過程における緊張感が途切れることなく続く。事件が起きた楼閣という閉鎖的な空間設定や、限られた人数の登場人物が織りなす推理劇が、物語全体に引き締まった雰囲気を与え非常に楽しめた。